INTERVIEW インタビュー

 

――まずは、おふたりのお仕事についてお聞かせいただけますでしょうか。

内古閑
クレジットはタイトルロゴデザインとなっていますが、ほかにも各話のサブタイトル画面、ウェブサイトデザイン、BD/DVDやCD、コミックス、一部グッズのアートディレクションなどをやっています。パッケージイラストなど、みなさんがご覧になるビジュアルの構成や構図なども決めることがありますね。

川村
私は海村の公民館に飾られている、昔話のタペストリーイラストを描かせていただきました。タペストリーデザインとして7点と、夢に出てくるおじょしさまのイメージビジュアルを描きました。

――『凪のあすから』、P.A.WORKS作品に参加されることになったキッカケ何だったのでしょうか?

内古閑
僕は『Angel Beats!』にも参加していたんですが、その時は美術監督が東地(和生)さんで、ラインプロデューサーが辻(充仁)さんだったんです。東地さんとも辻さんとも、「また一緒にお仕事ができたらいいですねね」というお話はしていて、今回、辻さんからご連絡いただいたんです。

川村
  私がP.A.WORKS作品に初めて参加させていただいたのは『TARI TARI』でした。実は飲み友達だった橋本(昌和)から声をかけていただいて、作中のイラストを描かせてもらったんです。

内古閑
そうだったんですね!

川村
そして今回は、『TARI TARI』の時にご一緒させていただいた辻さんから声を掛けていただきました。

内古閑
その時から、どんなタペストリーなのか具体的に分かっていたんですか?

川村
はい。キャラクターのイメージも決まってましたし、公民館の仮画像ももうあって、そこに飾るタペストリーを描いてほしいというお話でした。イメージ資料として縄文時代の衣装やアクセサリーの写真をいただきつつ、エジプトの壁画なども参考にしました。「和洋折衷なイメージで」というオーダーもありましたね。内古閑さんはロゴをまず作られたんですか?

内古閑
そうですね。いただいたプロットを読んで何案か作成しました。最初はどのくらいSFっぽさがあるかが掴みきれなくて、若干迷いもあったんです。タイトルの“凪”に近づけるのであれば、本来は文字にも動きがないほうがいいのかもしれない。ロゴの書体は明朝体が似合うイメージだなと思いつつも、今のロゴのように文字に流れがある案のほかに、もっと静かな……文字の周りに粒子がついているような案も考えました。あと、塩害を受けている感じや、はかない雰囲気、時間の経過を出せるかもと、話数が進むにつれて文字が次第に削れて崩れていくアイディアもありました。

川村
なるほど!

内古閑
ただ形が違うロゴを各種の商品に使うのは難しいので、結局はボツにしました。あと2クール目でロゴを変えてはどうかという案もあったんですよ。川村さんのタペストリーは、タッチの指定などはなかったですか?

川村
そうですね……壁画っぽくというのはありましたが、それくらいで。監督のイメージもはっきりとありましたので、悩むことはなかったです。

――お互いのお仕事、作品についてどういう印象を受けましたか?

川村
まず、アニメの中のデザインワークとして、ロゴやビジュアルを制作する際、内古閑さんのような方がいらっしゃることを、今まであまり意識していなかったんです。今あらためてお話をお聞きして、なるほどそうだなと思い勉強になりました。

内古閑
だいたい僕の場合は、作品全体に関わる仕事が多いんです。最初にロゴを作って、そのあといろいろなアイテムに、作品の世界観とブランドイメージをデザインとして落とし込んでいく。簡単に言えば、BD/DVDジャケットなどのイラストを見て、「『凪のあすから』ってこうだよね」と思ってもらえるようなイメージ作りですね。イラストで表現する世界観も重要になるので、キャラクターのポージングなども僕のほうである程度、構成を決めることも多いんですよ。

川村
そうだったんですね。

内古閑
そういえば僕、『凪のあすから』が始まる前に、川村さんの個展を拝見したんですよ、うちのスタッフ全員で。架空の映画のイラストを展示するという。

川村
はい、その節はありがとうございました!

内古閑
その時は、まなかとちさきの絵も飾ってありましたよね。先ほどタペストリーのオーダーに縄文っぽいイメージもあったとおっしゃいましたが、川村さんの絵はちょっとモダンな感じがする。昔の絵のような雰囲気もあるけれど、オシャレな感じもあって、そこが『凪のあすから』らしさに、上手くはまった気がしました。

川村
古い感じを出したかったので、白い紙ではなくベージュ色の紙を使って描きました。ただ……私はアナログ派なので、あれは全部、手描きの一枚絵なんです。引き取りにいらした辻さんに、「え? 手描きなんですか?」と驚かれてしまいました(笑)。
内古閑
そうですよね。今やアニメの現場は原画以外、色の着くものはほとんどがデジタルですからね(笑)。

川村
すみません、未だにペンタブレットも持っていないんです(苦笑)。

内古閑
でも川村さんの描いた海神様もおじょしさまも、見る人の想像をかきたてるのがいいですよね。だから僕、BDのブックレット表紙を、タペストリーの海神様とおじょしさまをモチーフにして作ったんです。あのタペストリーがなかったら、そんなデザインもできなかったし、川村さんの絵からも想像力を膨らませてもらっています。

川村
ありがとうございます。そう言っていただけると頑張って描いた甲斐がありました(笑)。

――では、オンエアで実際ご覧になって『凪のあすから』にどんな印象を受けましたか?

川村
私は事前には1〜2話のシナリオしかいただいてなかったので、もっと暗い話なのかなと想像していたんです。環境破壊的な話かなと。だから空があんなに青いというのも予想外。ファンタジーと現実の境目も独特でしたし、後半の詳しいことはちょうどよくうろ覚えだったので(笑)、毎週視聴者の方と同じように楽しませてもらいました。

内古閑
僕ももともとP.A.WORKS作品が大好きなので、シナリオや内容資料も事前にもらっていながらも、いち視聴者目線で楽しませてもらいました。文字で話を知っているのと、映像付きで観るのでは印象も変わりますから、分かっていても早く先が観たい作品でした。

――ちなみに、おふたりのお気に入りのキャラクターは?

内古閑
キャラクターは……美海が好きで男の子もみんな可愛いんですが、今はさゆですね。終盤数話を映像で観て、大好きになりました。こんなに、話が進むごとにキャラクターへの感情がいい意味でコロコロ変わっていく作品も少ないですね。「紡は格好いいな」と思いながら観ていても、あまりにぶれないイケメンさに「紡、いい加減にしなさいよ」と感じたり(笑)。川村さんは誰が好きですか?

川村
私もさゆなんですよ。さゆと要だけ、家族の描写がないですよね? さゆは小さい頃、髪の結び方が下手くそだったので、あれはお母さんじゃなく、自分で結わいていたからかな? とか、裏設定があるかないかも気になって。だから、1クール目の美海の髪型も、まなかを意識しつつ、はっきりそうするのは恥ずかしいから、髪を止めてみたのかなと思いました。

――では話は少し変わりますが、『凪のあすから』には海と陸の人々が登場します。おふたりは、海派ですか?山派ですか?

川村
私は地元が海の近くなので、海派です。小さい頃は水着を着て自転車で泳ぎにいってたくらい。背景の建物がさびた感じとか、狭山くんの服装や軽トラなんかも、とてもリアルに感じました。

内古閑
僕は山派ですね。実は生まれてこのかた、海で泳いだことが一度もないんです。海はちょっと怖いので、エナがあったらなぁと憧れますね。

――では最後に、『凪のあすから』もついに最終回を迎えましたが、おふたりにとってはどんな作品になりましたか?

川村
『TARI TARI』の時は1クールで、あっという間に終わってしまった印象がありますが、『凪のあすから』は2クール。本当に毎回楽しみで、しみじみと観てしまう作品でした。こんな素敵な作品に参加できてうれしかったです。

内古閑
僕にとっては今まで『Angel Beats!』が代表作だったのですが、『凪のあすから』はそれに並ぶ作品。企画にも初期から参加させてもらい、世界観を作るお手伝いも少しはできたのではと思っています。ただ、まだまだBD/DVDの制作は続きますし、僕もジャケットや収納ボックスでやりたいデザインがまだあるので、いろいろと挑戦できたらいいなと思ってます。