INTERVIEW インタビュー

 

――まずは『凪のあすから』のエンディング主題歌を担当することになったときのご感想をお聞かせください。

最初にタイトルの“凪”に親近感が湧きました(笑)。それとキャラクターイラストや初期設定を拝見して、この海の中の風景をP.A.WORKSさんが映像化したら、すごく綺麗で素敵なアニメーションになるだろうなと想像しました。

――「アクアテラリウム」はやなぎさんの作詞ですが、どんなテーマを考えられたのでしょうか。

『凪のあすから』は海に暮す人たちが主人公ではありますが、同時に陸の世界も登場するので、海から砂への“境界”を書いてみようと思いました。それとタイトルの「アクアテラリウム」は、ひとつの水槽の中に水中と陸地が存在する生態系を模したもの。水槽は、向こう側の世界は見えているけど魚は外に出て行けない。“自分は小さな世界の中にいるんだ”というイメージもありますね。

――歌詞に出てくる「デトリタス」という言葉も印象的です。海中に堆積するプランクトンの死骸など有機物粒子を意味する言葉ですが、こちらを選ばれたのは?

劇中に出てくる“ぬくみ雪”がとても印象に残っていましたし、現実の海中にも肉眼で見えるデトリタスとしてマリンスノーがあります。作品と世界観をリンクさせる意味でも、聴いた方にもその美しい景色が見えて欲しいなと歌詞に入れました。

――作曲は石川智晶さんですが、どのようなやりとりがありましたでしょうか。

石川智晶さんに曲をお願いした時に、まずキーになるフレーズ(詞)を欲しいというお話がありました。それでシナリオを読み、今サビになっている「♪温かい水に泳ぐデトリタス〜」からの部分をまずお渡して、その後曲をいただいてから続きの歌詞を書いていきました。私にとっても、こういう曲作りは初めての経験だったので、難しくもありましたが新鮮で楽しかったです。

――美しいメロディーが心に残りますが、やなぎさんはどう受け止められましたか?

石川さんとの曲作りは初めてでしたが、石川さんの曲はいつもコーラスが特徴的。今回も全部を「ヒ」で歌う独特のコーラスワークが入っていてビックリしつつ、とても素敵だと思いました。でも、実際はとても難しくて。レコーディングも石川さんにディレクションしていただいたんですが、綺麗な「ヒ」の歌い方をいくつも試しながら10人分くらい声を重ねていったので、コーラスだけでも丸1日かかりました。メインボーカルのほうも、歌を歌われる方ならではの具体的なアドバイスをいただけて、とても勉強になりました。

――やなぎさんの透き通るようなボーカルにのせて、とても幻想的な世界に入り込める楽曲になりましたが、やなぎさんの中には、どんな風景が広がっていましたか?

海の中がゆらゆらしていて、遠いところから光が差し込んでいるけど、その光は海の中ではなく“境界”の向こうにあるもの。そういうイメージはずっと持っていました。自分の中では、この歌詞はあまりハッピーエンドではなく、ずっと平行線なんです。向こう側はいつも見えているのに、行けない……それは作品から受けた私個人の印象でもあります。『凪のあすから』のお話も、今のところみんなが一方通行の想いを抱えて、誰かが誰かを追い掛け続けている甘酸っぱい物語……その“届かなさ”があるのかなと。

――お気に入りのフレーズはどこですか?

時間をかけて書いたサビはイチオシなんですが……さりげなく、ふたつのフレーズを重ねて歌っているところ、Dメロの「♪いつかひとりで目覚めた君の (いつかそう僕がいなくなる時に)」がとても気に入っています。この世界の隔たり、私が思い描いたテーマがいちばん濃く出ているんじゃないかなって思います。

――「アクアテラリウム」と共に流れるエンディング映像については、どう思われましたか?

第1話は自宅のソファに正座して、曲が流れる最後まで緊張でプルプルしながらリアルタイムで拝見したんですが(笑)、私はいつもエンディングに曲がどう入ってくるのかを楽しみにしているんです。第1話は、光とまなかのふたりが手を繋いで泳いでいくシーンがとても素敵で、キュンとしました。「アクアテラリウム」もアニメ用にギターから始まるバージョン、歌から始まるバージョンといろいろ用意されているので、今後、お話によってどのバージョンが使われるかも楽しみです。

――『凪のあすから』はファンタジックなお話ですが、やなぎさんが子供時代にお好きだったファンタジーな物語や絵本を教えていただけますか?

私、『ガンバの冒険シリーズ』の本が大好きです。主役はネズミ達なんですけど、なかでもイカサマというキャラクターが格好よくて! 彼がお亡くなりになった巻は(苦笑)、本当にヘコんでしまいました。

――では最後にファンの皆さんにメッセージをいただけますでしょうか。

「アクアテラリウム」は、いろいろなキャラクターの視点からドラマを追えるように歌詞を書いたので、話数ごとに、いろいろな聴き方をしてもらえたら嬉しいです。11月20日にリリースされるこの曲のシングルには、私が作詞・作曲した「mnemonic」という「アクアテラリウム」と対になる曲も収録されます。「アクアテラリウム」は海の中から砂浜を見上げている世界ですが、「mnemonic」は陸地から海を見ている世界。ぜひ併せて聴いていただけたらと思います。