INTERVIEW インタビュー

――岡田さんはこれまでも篠原監督と何度かご一緒に作品を作られてきていますが、岡田さんから見て篠原監督はどんな方でしょうか?

岡田
作品的なところで言えば、とても美意識が高いのにかっこつけない、スマートなのに熱があるフィルムを作ることのできる監督です。感情のひとつひとつを、一番美しく張りつめたところで切り取ってくださる方だと。作業的に言えば、「篠原さんのために何かがしたい」と思える監督です。アニメを作ることを、余計なしがらみにとらわれずに、心から楽しんでいるのが伝わってくる。だからこそ、私もできる限りをしたくなるというか。あんな風になりたいな、と思える先輩の一人です。

――松田さん、橋本さんは篠原監督と仕事をされてどんな印象を持たれていますか?

松田
作業しやすい現場を作るということを、とても意識していると感じました。“皆でひとつの作品を作ろう”という連帯感を大切にされていて、スタジオでの席の配置にしても「もっと皆で話せるような配置にしよう」と、スタッフへの配慮もしていただける。もちろんその中には僕らも含まれていて、篠原監督と一緒に仕事をすると本当に勉強になります。

橋本
あと付け加えるなら集中力がすごい方。ひとつのことに夢中になるとほかのことを忘れてしまうぐらい集中されるんです。

岡田
そう、あの集中力は本当にすごい。表現したいことが浮かぶと周囲も見えなくなるみたいで、たとえばそれが多くの人と一緒にいる本読みの時でも、篠原さんだけの空間ができあがっちゃうんです(笑)。でも、だからこその篠原フィルムなんだろうなと。篠原さんの想定する映像は、空気とか匂い、気配のような、本来なら後回しにされそうなところがとても重要視されてる。それは、あの『物事に深くもぐる姿勢』がなければ難しいと思うんです。

――では、松田さん、橋本さんから見て、岡田さんはどういう方ですか?

松田
初めてお会いした時は、怖そうだなと。

一同(笑)。

松田
でも実際にお話をしたら、気さくで、とても気を使っていただけて。こう言っては失礼なのですが、とても女の子らしい方だなって。

橋本
僕の第一印象は、自分の言いたいことをハッキリ言われる方だなと。

岡田
これ以上なにか言われると怖いので、先に進めてください(笑)。

――ではお話を作品に戻して(笑)。光やまなかなど、キャラクターについてお聞かせください。

岡田
海と地上の男の子と女の子というところから、どういう恋が成り立つのか考えてキャラクターを作っていきました。最初は童話のような雰囲気をもった物語を、深夜アニメの文法で作ってみたいと漠然と思っていたんです。けれど、それをイコールにするものがなかなか見つからない。悩んだすえに、“恋が生まれそうな瞬間の目撃者を作ろう”と思い付いたんです。そこから“童話を読む人の話”の目線で描くと面白いんじゃないかなって。

――童話を読む人というのが、主人公の光にあたるわけですか?

岡田
そうですね。光は威勢がよくて、周りを引っ張っていくバリバリ主人公タイプのキャラクターなのですが、今までの作品にあるような主人公の立場ではないんです。極端なことを言ってしまえば、主人公になれない子。童話を読む側、恋が生まれそうな瞬間を目撃する人、それが光。そこから書き出していったらどんどん物語が転がっていって、他のキャラクターたちも動き出すようになりました。ただ『凪のあすから』では、光をどう描けば魅力的に見えるかというのは、常に考えています。

――『凪のあすから』ではどんな恋愛が描かれるのでしょうか?

岡田
彼らはまだ中学生で、しかも海の子供たちは地上の子供たちよりもだいぶ幼い。恋愛関係に悩むより前に、「人を好きになるってどういうことだろう」という疑問からはじまるんだと思うんです。思春期の心の色合いは、デリケートに扱っていきたいです。

――松田さん、橋本さんが『凪のあすから』をひと言で表すと?

橋本
キラキラした作品。

松田
ドロドロした作品。

一同(笑)

岡田
はい、まとめるとキラキラドロドロした作品です(笑)。

――では最後に、岡田さんが『凪のあすから』で一番描きたいことは何でしょうか。

岡田
童話って子供をターゲットにしていながら、深く読み解くとさまざまな思いがこめられているものが多いですよね。実際にある苛烈な状況や複雑な感情を、シンプルに美しく描いている。それを、この作品でもやってみたいんです。本来はありえない世界でも、そこに描かれているものは普遍的でどこか懐かしい。逆にいえば、童話をイメージしているからこそ切りこめるネタも盛りこんでいきたいです。松田君と橋本君の言葉を借りれば、ドロドロしたものをキラキラと描きたいですね(笑)。